玄関のチャイムが鳴った。
犬が吠えてそれを制しながら扉を開けたら、
「こんにちは。今、無料でいらない家電を集めさせてもらっていますが何かありますか」
割と体格のいい若い男の子が言った。
なんとも言えない奇妙な感じが少ししたけれど、ちょうど該当するものがあって、それを無料で持っていってくれるならと考え合わせたところ、わたしの心の中は固まった。
「じゃ、ちょっと待ってくれます?うち、動物がいて玄関から出てしまうから一旦締めますね」
そう言って大きいものを二つ、玄関に運んだ。わたしの体力ではそれが限界で、一旦その若い男性に上がってもらって運んでもらおうかなと思ったが、なぜかそんな気になれなかった。
「はい、持ってきたわよ」と玄関の扉を再び開けて呼んだ。
「え?」
「集めてるって言いましたよね?いいんですよね?これで」
「あ、はい」
「悪いんだけど、動物が外に出たがるから急いでいただける?」と言って早く持って出てもらうべく急かした。そして改めて「無料だよね?」と何度も確認して「そうです」というので「じゃよろしく」とお願いした。
「あの、ボク、呼びかけて回ってるんで数時間後取りに来ますんで、ちょっと玄関の前に置いておいていいですか」というので「構わないですが、後で近所に怒られたら困るから必ず取りにきてね、悪いんだけど」と強調した。
そして実際に忘れた頃にまた玄関のチャイムが鳴った。
その時は異様に犬が鳴いて、
「なんでそんなに吠えるのよ」と言いながらまた玄関を開けたら
「すいません。さっきのを取りにきました」
と青年が言った。
「あら、あなた別の人?それだからよろしくね。申し訳ないんだけど、ペットが玄関から出たがるから閉めるね、よろしく」
と言って終わった。
ラッキー、なんか知らんけどラッキーと思っていた。
それが詐欺師だったと昨日知った。
知らんかった。
だからあんなに変な表情をしていたのか。
驚いたけど、やっぱり助かった。
よくわからないが詐欺師の人たち、うちに関してはお疲れさまでした。
奇妙なエピソードだった。

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